声の無断生成・パブリシティ権(津田健次郎訴訟・経産省不競法改正): 東京地裁が「声もパブリシティ権の対象」と初判断、経産省が不競法改正へ
声優・津田健次郎氏がTikTok上の無断生成AI音声動画の削除を求めた訴訟で、東京地裁は2026年9月30日、動画削除済みとして請求を棄却しつつも、司法判断として初めて声も一定の場合にパブリシティ権の保護対象になり得るとの判断を示した(津田氏側は控訴しない方針を表明)。一方、経済産業省は同年10月13日に不正競争防止法の改正に向けた検討を開始し、声や肖像の無断利用を防ぐ新規定などの議論を進めている。
- 発端
- 声優有志や日本俳優連合(日俳連)などが「NOMORE無断生成AI」の共同声明を発表
- 現在の状態
- 進行中最終確認
- 次の予定
- なし確定している今後の予定はありません
- 経緯
- 3件最新の動き
訴訟と法改正の概要(2026-10-14 確認)
生成AIを用いた著名人や声優の「声」の無断模倣・悪用をめぐり、司法判断と国の法制化(法改正)の両面で大きな動きが起きています。
津田健次郎氏の TikTok 訴訟
- 事件: 声優・俳優の津田健次郎氏が、自身の声を生成AIで模倣したナレーション付き動画が無断公開されたとして、TikTok 運営会社(TikTok Pte. Ltd.)に動画削除を求めた訴訟(出典: 東京地裁判決全文)
- 提訴時期: 2025年11月(東京地方裁判所。出典: スポニチ)
- 被告: TikTok Pte. Ltd.(TikTok 運営会社)
- 問題となった動画: 2024年7月〜2025年9月にかけ、都市伝説や心霊現象を紹介する動画計188件が無断投稿された(2025年11月時点でフォロワー21万人以上。出典: 東京地裁判決全文)
- 判決日: 2026年9月30日(東京地方裁判所民事第46部、高橋彩裁判長)
- 判決の主文: 原告の請求を棄却(訴訟費用は原告負担)
- 対応方針: 判決後、津田氏側の代理人弁護士が控訴しない方針を表明(出典: 弁護士ドットコム)
経済産業省による不正競争防止法の改正検討
- 会議体: 産業構造審議会 知的財産分科会 不正競争防止小委員会(第31回)
- 検討開始日: 2026年10月13日
- 検討目的: 生成AIによる声や肖像(容姿)の無断利用を防ぐため、不正競争防止法の改正を検討すること
- 提示された案:
- 案1: 不正競争防止法の「商品等表示」の定義に「音声」「肖像」を追加する(ただし周知性・著名性が必要)
- 案2: 知名度にかかわらず保護してほしいとの要望を踏まえた新規定案(声や肖像の無断利用を防ぐ新たな不正競争行為の類型・規定を設ける)
裁判所の判断と意義
1. 請求棄却の理由
津田氏側が削除を求めていた問題のアカウントは、提訴後の2026年5月に投稿者自身によって削除されていました。そのため裁判所は、TikTok 運営会社に動画削除を命じる法的な必要性(義務)がなくなったとして、請求を棄却しました。
2. 「声もパブリシティ権の保護対象になり得る」とする初の司法判断
請求自体は退けられたものの、判決は一般論として「人の声は、人の肖像と同様に個人の人格の象徴であるということができる」と明確に指摘しました。
その上で、著名人・声優らの声を無断で使う行為について、その声が持つ「顧客吸引力(商品の販売などを促す力)」を専ら利用する目的である場合は、「パブリシティ権の侵害に当たると解するのが相当であるといえる」との判断を示しました(本件の音声が津田氏の声に類似するかや、実際の権利侵害の有無については判断していません)。
日本の法律には「声の権利」を直接明記した規定がなく、声も一定の場合にパブリシティ権の保護対象になり得ると明示した司法判断は国内初と報じられています。
経産省による法改正の検討
2026年10月13日に経済産業省の審議会で、不正競争防止法(不競法)の法改正に向けた検討が行われました。
- 法改正が検討される背景:
- 著作権法の限界: 人の声そのものは著作物ではないため、既存の著作権法では声の模倣自体を直接規制できません。
- パブリシティ権の限界: パブリシティ権は法律の条文ではなく判例法理に基づく権利であるため、保護の明確性や差止・罰則などの実効性に課題がありました。
- 現行不競法の限界: 2025年に経産省は現行法でも規制対象になり得るとの見解を示していましたが、法律家から対応範囲が限られるとの指摘が出ていました。
- 審議会で示された2案:
1. 既存条文(商品等表示)への追加案: 氏名や商号などを保護する枠組みに「肖像」「音声」を加える。ただし、保護には広く知られていること(周知性・著名性)が必要になります。
2. 新たな規制類型の創設案: 「知名度にかかわらず多くの声優らの声を守ってほしい」という実演家団体の要望を踏まえ、声や肖像の無断利用を防ぐ新規定を設ける案。
- 今後の見通し: 会合では有識者からの明確な反対意見はなく、本人だけでなく所属事務所にも差止請求権を認めるかなど、実効性を高める詳細な制度設計が議論される予定です。
経緯新しい順 ・ 3件
- 最新経済産業省が産業構造審議会 知的財産分科会 不正競争防止小委員会(第31回)で、声や肖像の無断利用を防ぐ不正競争防止法改正の検討を開始。保護のための2案を提示。朝日新聞
- 声優有志や日本俳優連合(日俳連)などが「NOMORE無断生成AI」の共同声明を発表。声の無断追加学習や生成に対する強い危機感を訴える。
争点
- 「声」の法的保護とパブリシティ権: 著作権法が対象としない「声の個性」について、容姿(肖像権)と同様にパブリシティ権(顧客吸引力の排他的一定保護)が認められるか。地裁判決は一般論としてこれを認めました。
- プラットフォームの責任と訴訟の限界: 投稿者が提訴後にアカウントや動画を自主削除した場合、プラットフォームに対する削除請求は「必要性を欠く」として棄却されるため、被害の予防や実効的な救済手続きに課題が残ることが浮き彫りになりました。
- 保護の範囲(周知性の有無): 著名な声優・タレントだけでなく、新人声優やナレーター、一般人の声・肖像まで法改正で保護できるかどうかが、不正競争防止法の法改正議論(案1 vs 案2)における最大の論点となっています。
反応各方面の主な反応(要約)。出典は各行のリンク先を参照
実演家・声優団体(日本俳優連合など)判決結果は請求棄却であるものの、「司法が声のパブリシティ権を肯定したことは極めて大きな前進である」と評価する声明を発表。実効性のある法制化(法改正)を強く求めています。
報道機関・法曹界判決直後の報道では「請求棄却」を見出しにする媒体(毎日新聞等)と、「声のパブリシティ権を初認定」を見出しにする媒体(朝日新聞、共同通信、TBS等)で焦点が分かれました。法曹界では、生成AI時代における実演家の権利保護に関する歴史的な司法判断として高く評価されています。
TikTok 運営会社判決に対し、「今後も、テクノロジーの発展と権利保護のバランスのとれた在り方について、誠実に取り組んでいく」とコメントしています。
掘り下げ
誰に影響するか: 声優・俳優・ナレーター・VTuber などの実演家、音声合成・音声生成AIサービスを開発・提供する事業者、動画投稿者やクリエイター、コンテンツ配信プラットフォーム。
利用者はどうすればよいか:
- 生成AIで音声を扱う場合: 実在する声優や著名人の音声を無断で学習させたAI音声モデルの利用や、本人を騙る・連想させる形での動画投稿・収益化は、パブリシティ権侵害や不競法違反に問われる法的リスクが非常に高いです。
- 正規の音声利用: 商用利用や二次創作の許諾条件が明記された公式の合成音声ライブラリ(VOICEVOX 等の利用規約に沿った利用)や、本人の許諾を得た音声モデルを利用してください。
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